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旧車のボディメンテナンス|洗車はすべき?コーティングは貼れる?薄い塗装を守る順番

年代物のポルシェ

古くてマニアックな車を所有している方がご来店される際、口をそろえて言うのが「愛車を美しく保つためのコツを教えてほしい」という一言です。

先に、この記事の答えをお伝えします。旧車のボディメンテナンスに「全員に当てはまる正解」はありません。ただし、「やってはいけないこと」と「判断の順番」ははっきりあります。新車や近年の車と違い、旧車の塗装はとても薄く、デリケートです。いくら大切に屋内保管されていても、何十年も前のオリジナル塗装となると、磨き作業ひとつでも、現場は通常の車とは違う緊張感に包まれます。

この記事では、旧車の塗装が何が違うのか、洗車はしたほうがよいのか、コーティングやプロテクションフィルムは貼れるのか、そして料金の考え方まで、旧車をお預かりする東京・足立区のコーティング専門店アルファの目線で解説します。

目次

旧車の塗装は、何が違うのか

年代物のポルシェのボディ

今の車の塗装は、色の層の上に厚めの透明な層(クリア層)が乗っていて、この層が紫外線や傷から色を守っています。ところが、1980年代より前の車の多くは、クリア層が無い、あってもごく薄い「ソリッド塗装」です。しかも何十年も紫外線を浴びて、残っている塗装そのものが薄く、硬く、もろくなっています。

旧車の塗装は「削れる余裕」がほとんど無い 今の車の塗装 クリア層(透明・厚め)= 磨ける余裕 色の層 下地・鉄板 傷はクリア層の中で止まる。磨いて消せる 旧車のオリジナル塗装(ソリッド) クリア層が無い、または紙のように薄い 色の層(劣化して硬く、もろい) 下地・鉄板(さびが出ていることも) 少し削ると色の層に届く。強い薬品にも弱い

同じ「磨き」でも、旧車では削れる厚みが桁違いに少ない。だから慎重になります

強い薬品と、強い研磨。この2つが旧車の塗装を傷める

今の車では当たり前の作業が、旧車では落とし穴になります。ひとつは薬品です。鉄粉や水垢を落とす濃い薬剤は、劣化した塗装に染み込んで色を変えたり、艶を奪ったりすることがあります。もうひとつは研磨です。クリア層の余裕が無いので、少し磨きすぎるだけで色の層に届き、その部分だけ色が変わってしまいます。一度そうなると、元には戻せません。

レストア(全塗装)されている車なら、今の車に近い塗装なので、通常に近い作業ができます。慎重にならなければいけないのは、オリジナル塗装を残している車です。「当時の塗装のまま」であることが価値そのものなので、削らずに済む方法を優先します。


旧車の洗車は、したほうがいいのか

ガレージに保管された年代物のポルシェ

実は、旧車のオーナー様の中には、洗車をほとんどしない方がいます。走り終えたら軽くホコリを払うだけ、という方です。これには理由があります。

「水を避けたい」オーナーの言い分にも理がある

古い車のボディ部品は、メーカーの再販や中古部品で何とかなることがありますが、ゴム部品はどうしても手に入らないことが多く、劣化しても代わりが無いので、今付いているものを使い続けるしかありません。硬くなったゴムに水をかけると、隙間から車内やドアの中に水が入り、雨漏りやカビ、内側からのさびを招きます。ボディの水抜き穴に汚れが溜まり、逃げ場を失った水が特定の場所に溜まって、大きなさびを誘発することもあります。

こうした理由から「極力水を避ける」という結論に至るオーナー様は一定数います。愛車との接し方は人それぞれで、「ある程度きれいならそれでいい」という割り切りも、旧車とは長く付き合うためには必要な考え方です。

それでも「洗ったほうがいい」と考える2つの理由

数々の車をコーティングしてきた立場からは、それでも旧車は洗ったほうがよい、と考えています。理由は2つあります。

1つ目は、放っておくとボディを侵食する汚れがあること。鳥のフンや虫は、酸やアルカリで塗装を侵し、クレーター状の跡を残します。花粉や黄砂は粘り気があり、放っておくと簡単な手入れでは落ちない強固な汚れに変わります。薄い旧車の塗装ほど、この侵食は深刻です。走ったあとに付いた汚れは、その日のうちに落としてください。

2つ目は、洗車が点検のきっかけになること。隅々まで洗うと、細かな不具合に気づけます。実際に、めったに洗わなかった車を久しぶりに細かく洗っていたところ、下回りでオイル漏れを見つけたことがあります。早期発見だったので大事には至りませんでしたが、洗わなければ気づかなかったはずです。

旧車の洗車、こう判断する 走ったあと、汚れは付いた? 鳥のフン・虫・花粉・黄砂 ホコリ程度 雨・泥・融雪剤を浴びた ・その日のうちに落とす・ぬるま湯でふやかして、擦らない・その部分だけ、水は最小限に ・乾いたホコリは払わない(傷)・ブロワーか、湿らせた柔らかい布・水洗いは不要 ・洗う。ただし高圧は使わない・ゴムの継ぎ目に水を当てない・ドアを開けて水抜き穴を確認 共通:洗ったら乾く前に拭く。水抜き穴とドアの下の隙間に水が残っていないか見る

「洗うか洗わないか」ではなく、「何が付いたか」で決めると迷いません


旧車にコーティングはできる?アルファの作業で気をつけていること

アルファの工場に入庫したトヨタ オリジン

できます。そして、薄い塗装を紫外線と汚れから守るという意味では、旧車こそコーティングの効果が出やすい車です。ただし、通常の車と同じ工程では危ないので、アルファでは次の点を変えています。

コーティング前の洗車:薬品を「弱いものから」試す

長年かけて積み重なった鉄粉やピッチ・タール(道路の油汚れ)を、薬剤や粘土で落とす。通常のコーティングでは必ず行う工程ですが、旧車には落とし穴があります。塗装の薬品への耐性が低いことです。

水垢を落とす濃い薬剤などをそのまま使うと、オリジナルの塗装を傷める可能性があるため、安易には使えません。目立たない場所で弱い薬剤から試し、反応を見ながら段階的に強くしていきます。長年の経験を持つ職人でも判断が難しいことがあり、オリジナル塗装を残している車両ほど慎重に進めます。粘土(クレイ)も同じで、旧車では極力使わず、薬剤で浮かせて流せる範囲にとどめます。

研磨:ウールのバフは使わず、極細のスポンジで様子を見ながら

オリジナル塗装への研磨は、相当なリスクを伴う作業です。長期間大切にされてきた車であっても、塗装は劣化していて、磨きすぎればボディに大きな負担をかけます。どこまで磨いてよいかを正確に判断し、お客様が納得する仕上がりまで磨き上げられるのは、プロと呼ばれる人の中でもほんの一握りです。

アルファでは、旧車の場合、削る力の強いウールのバフは極力使わず、極細のスポンジバフで様子を見ながら作業します。そのぶん時間がかかるので、旧車は通常より少し長めに納期をいただいています。「傷を全部消す」より「色の層を残す」を優先する、と最初にお伝えしています。

プロテクションフィルムは「貼れる塗装かどうか」を先に確認する

飛び石から守るプロテクションフィルムも、旧車に貼ることはできます。ポルシェ911(964)のフロントに施工した事例もあります。ただし、フィルムは数年後に剥がすものです。劣化した塗装や補修歴のある塗装は、剥がすときに塗装ごと持っていかれるおそれがあります。

そのため、貼る前に塗装の状態を確認し、貼らないほうがよいと判断した場合は正直にお伝えします。「今のオリジナル塗装を守りたい」という目的なら、フィルムよりコーティングのほうが合っていることも多いです。旧車で先に守っておきたいのは、むしろ内装です。もう手に入らないシートやダッシュボードを日焼けから守る方法は、旧車・クラシックカーのカーフィルムにまとめています。


旧車のコーティング料金と、頼むときに伝えてほしいこと

施工を終えたポルシェ911(964)のリアビュー

アルファのコーティング料金は、洗車・鉄粉除去・磨きを含んだ金額です。旧車だから割増、ということはありません。ただし、塗装の状態によって磨きの工程が変わるため、まず車を見せていただいてからお見積もりします。

メニュー(Mサイズ)料金(税込)旧車での考え方
ガラスコーティング110,000円〜薄い塗装を紫外線と汚れから守る。艶は控えめで自然
セラミックコーティング220,000円〜膜が厚く、青空駐車や長く乗る車に

※アルファの料金プランより。下地処理・磨きの費用を含みます。旧車は磨きを控えめにするため、通常より納期を長めにいただくことがあります。

ご相談のときに教えていただきたいのは、次の3つです。①オリジナル塗装か、全塗装(レストア)済みか。②過去に部分的な補修をしたことがあるか。③屋内保管か屋外か。この3つで、使える薬剤・磨きの強さ・おすすめするコーティングが変わります。分からなければ、分からないとお伝えいただければ、こちらで見て判断します。


旧車のボディメンテナンスについて、よくあるご質問

赤いトヨタ マークX

旧車にコーティングをすると、当時の雰囲気が変わりませんか?

ガラスコーティングは、艶がぎらつかず自然な仕上がりです。「新車のようにピカピカ」ではなく「当時の艶を保つ」方向で仕上げられます。艶の出方はご希望に合わせて調整しますので、事前にお伝えください。

傷をすべて消してもらえますか?

オリジナル塗装の場合、すべて消すことはおすすめしません。傷を消すには削る必要があり、旧車の塗装には削れる余裕がほとんど無いためです。「浅い傷は消し、深い傷は残して色を守る」という判断になることを、あらかじめご了承ください。

ワックスとコーティング、旧車にはどちらがいいですか?

どちらでも構いませんが、手間と保護力ではコーティングが上です。ワックスは数週間で落ち、そのたびに塗る作業が塗装への負担になります。コーティングなら一度施工すれば年単位で持ち、洗車が水洗い中心で済むので、塗装に触る回数そのものが減ります。

さびが出ている車でも受けてもらえますか?

表面のさびであれば、状態を見てご相談に応じます。ただし、さびそのものの修理は板金塗装の領域で、コーティングでさびは止まりません。専門性の高い旧車の塗装については、その車種を得意とする板金塗装店がとても詳しい傾向にあります。必要な場合はそちらを先におすすめすることもあります。


まとめ:正解はなくても、順番はある

年代物の旧車
  • 旧車の塗装は薄く、削れる余裕がほとんど無い。強い薬品と強い研磨を避ける
  • 洗車は「何が付いたか」で決める。鳥のフン・虫・花粉はその日のうちに。ゴムの継ぎ目に水を当てない
  • コーティングはできる。弱い薬剤から試し、極細のスポンジで磨く。傷を全部消すより色を残す
  • プロテクションフィルムは塗装の状態次第。貼れない塗装は貼れないと正直にお伝えする

旧車のボディメンテナンスがプロでも手を焼くほど複雑なことは、お分かりいただけたかと思います。愛車との接し方は人それぞれ。ただ、「取り返しのつかないことをしない」順番だけは守っていただければ、旧車は長く付き合えます。それでは良きカーライフを。

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