【十人十色】旧車のボディメンテナンス方法に正解はあるのか
古くてマニアックな車を所有している方がご来店される際、口をそろえて言うのが「愛車を美しく保つためのコツを教えてほしい」という一言。
新車や近年の車と異なり、旧車の肌はかなりデリケート。
いくら大切に屋内保管されているとしても何十年も昔のオリジナル塗装となると、研磨作業ひとつでも現場は通常車両の施工時とは異なる緊張感に包まれます。
今回の記事ではそんな旧車に対するボディケアについてをディテイリングショップ視点で解説していきたいと思います。
年代物旧車へのコーティング作業
上述したように旧車へのコーティング作業はかなり気を使います。
我々が古い車をお預かりした際に気をつけているポイントを工程ごとに解説していきたいと思います。
コーティング前洗車
長年かけて積み重ねてきたボディに付着した汚れ、鉄粉やピッチ・タールをケミカルや粘土で落とす。
通常のディテイリングでは必ず行うものですが、旧車には思わぬ落とし穴が。
それは塗面のケミカル耐性の低さです。
スケール除去剤などの濃度の高いケミカルを使用するとオリジナルの塗装にダメージを与えてしまう可能性があるため安易に使用できません。
長年の施工経験を持つ職人でも判断が難しい場合もありますし、レストアされている車両ならまだしも、オリジナル塗装を残している車両に関しては特に慎重にならなければなりません。
研磨作業
オリジナルペイントへの研磨作業は相当なリスクを伴う作業になります。
たとえ長期間大切にされてきた車であっても、クリア層は劣化しているので磨きすぎるとボディに大きな負担をかけることになります。
どこまで磨いていいのか正確に判断しお客様が納得いく仕上がりまで磨き上げるのはプロと呼ばれている人間の中でもほんの一握りしかいません。
当社の場合はウールバフは極力使用せず、極細スポンジバフで様子を見つつ作業しているので旧車の場合は少し長めに納期をいただくようにしています。
そもそも旧車オーナーは洗車をしない人が多い
実は旧車オーナーの中には洗車はほとんどしない方も存在します。
かくいう筆者も自分より年上の車を所有しておりますがほとんど洗車をしません。
走行を終えたら簡単に埃を払う程度です。
古い車になるとボディパーツはメーカーが再販を行っていたり、リサイクルパーツを探し回ればなんとかなるケースがありますが、ゴム類はどうしても手に入らないことが多く、劣化しても代替品がない為今ついているものを使い続けるしかないのが実情。
また、ボディの水抜き穴に汚れが蓄積され、逃げ場を失った水が特定の場所に溜まり、それが原因で大きな錆を誘発することもあります。
以上の理由から旧車のボディメンテナンスに関しては「極力水を避ける」という結論を導き出すオーナーは一定数存在します。
愛車との接し方は人それぞれ。
「こんなに古い車なんだからある程度綺麗になっていればそれでいい」というポジティブな割り切りはある程度必要なのかもしれませんね。
それなら洗車を避けるべきなのか
ボディはもとよりエンジンルームやホイールハウスにも水がかかり、劣化の激しいゴム部品がある場合は雨漏りによる車内のカビリスクも高まる。
結局のところオーナーの考え方次第になるのでここからは筆者の主観と感想が多くなりますが、私個人、数々の車をコーティングディテイリングしていく中で「旧車でも洗車はしたほうが良い」という考えに至りました。
その理由を以下に見ていきましょう。
汚れの種類によってはボディを侵食していくものもある
代表的なものでいうと鳥の糞や虫、花粉や黄砂等の季節的なものが上げられます。
前者は酸性クレーターやアルカリ性クレーターの原因となり放置すると塗面を侵食していきます。
花粉や黄砂は粘着性を持つため放っておくと洗車や簡単なボディメンテナンスでは落とせない強固な汚れに変貌します。
これらの汚れはほんの一部でその他ボディを蝕む汚れは数多く存在します。
ボディをいたわる気持ちが逆に劣化につながることにもなりますので、走行時に付着した汚れはその日のうちに落とすようにしましょう。
車両の細部まで目を配る理由になる
洗車をする際に隅々まできれいにすることで些細な不具合や車両の異変に気付けることもあります。
これは私の経験なのですが、めったに洗車にすることがなかった愛車を久しぶりに細かく洗車していたところ下回り洗浄時にオイル漏れを発見したことがあります。
幸い早期発見のため大事には至りませんでしたが、そういったトラブルを見つけるきっかけにもなるため、個人的には洗車はするべきだと思います。
まとめ
今回も筆者の主観が多く含まれる記事になってしまいましたが、旧車のボディメンテナンスがプロでも手を焼くほど複雑なことはお分かりいただけましたでしょうか。
これは余談ですが、こういった専門性の高い旧車の塗面についてはその車種を得意とする板金屋さんはとても詳しい傾向にあります。
もし興味があればそういったお店を探して足を運んでみるのもいいと思います。
それでは良きカーライフを。