【モース硬度】ガラスコーティングの硬度について現役コーティングプロが徹底解説
鉛筆の芯のようにガラスコーティングにも硬度が存在するのはご存じでしょうか。
ここでの硬度とは、「傷つきにくさ」「変形しにくさ」を表しています。
コーティング業界では主に二つの尺度で硬度を表していますが、これらを混同してしまう方が非常に多く見られます。
このコラムではコーティングにおける硬度の単位、尺度や、硬度に対する正しい知識について詳しく触れていき、皆さんが誤った製品を選ばないようにお手伝いできればと思います。
また、コーティングの硬度を深く知っておくことで、自分の愛車に本当に合うコーティング選びの基準にもなりますので、最後までお付き合いいただけると幸いです。
硬度の尺度の話
上でも簡単に触れましたが、業界で使われている単位は主に二つ。
「鉛筆硬度」と「モース硬度」です。
この二つはどちらも引っ搔いた時の傷のつきにくさを表しています。
通常、樹脂やプラスチック、一般塗装の硬度やひっかき傷耐性を図る際には柔らかいものから硬いものまで幅広く計測できる「鉛筆硬度」を用いるケースが多いですが、ガラスコーティングを取り扱う業者の間では「モース硬度」を用いることがほとんどです。
ここ数年、ガラスコーティングの硬度でも鉛筆硬度を使うケースが出てきているので、間違えないように下でそれぞれの特徴について説明していきます。
鉛筆硬度
数字の後ろにアルファベットの「H」がついているのが特徴です。
名前の通り鉛筆と同じ表記ですね。
日本コーティング協会の定めた基準では、ガラスコーティングで使用される鉛筆硬度の限界硬度は9Hとされており、これ以上の硬度を持たせることは理論的に不可能とされています。
市場に出回っている9H以上の硬度を謳っている製品があれば、明確な基準のもとに記載されているわけではないので気をつけましょう。
モース硬度
ガラスコーティングの硬度として使われやすいのがこのモース硬度。
モース硬度と鉛筆硬度の関係を図式化したものを見てみましょう。
お分かりいただけるかと思いますが、モース硬度2~6の間に、鉛筆硬度H~9Hがおさまってしまいます。
鉛筆硬度で一番硬い9Hが、モース硬度の6程度の硬さしかないのです。
一般的なガラスコーティングの硬度
ガラスコーティングは鉛筆硬度で2H~9Hとなるのが一般的です。
しかし、この硬度はガラスコーティング単体でのものです。
塗装に塗布したガラスコーティングの厚みは極めて薄く、最も厚いものでも1μm(1mmの1,000分の1)程度です。
髪の毛の太さが50~100μmですから、どれほど薄いかご理解いただけるかと思います。
これほどの薄さで高い硬度を保つのは無理があります。
先ほどの画像の中で、ガラスコーティングがモース硬度で2.5~4.5となっているのはこのためです。
あまりにも硬度を上げてしまうと基材の熱による伸縮に耐えられなくなり、割れてしまったり剥離を引き起こす原因になってしまいますからね。
セラミックコーティングの硬度
セラミックコーティングとは、日本国内においてはガラスコーティングの上位互換として認識されていますが、含有物質はガラスコーティングのそれと変わりはありません。
では何故セラミックコーティングのほうが優れているとされるのでしょうか。
それは今回のテーマでもある硬度です。
セラミックコーティングはモース硬度で言うと4から4.5ほど、鉛筆硬度で言うと9Hほどあり、傷の付きにくさという点では頂点に位置するでしょう。
硬度が高ければ優れているというわけではない
では、硬ければ硬いほどガラスコーティングは優れているのかというと、そんなことはないんですよね。
なぜなら、いくら引っ掻いた時に傷がつきにくくても、全く傷が入らない・変形しない・壊れないという訳ではないからです。
現に、硬度の高いセラミックやダイヤモンドなどもハンマーなどで叩けば割れてしまいますし、逆に硬度の硬さが高くなればなる程、クラックと呼ばれる「ひび割れ」であったり、多層化による「剥がれ」などの現象が起こり易くなってしまいます。
なので、この記事を読んでくださっている皆様には、基材の熱伸縮に問題なく対応できる丁度よい硬度のガラスコーティングを選んでほしいと筆者個人的には思っています。
まとめ
いかがだったでしょうか。
車のコーティング剤は硬度がそれぞれ違い、被膜の硬さが変わります。
愛車の保護能力に関わる数字なので、必ずチェックするようにしましょう。
数字の大きいものほど硬度が高いという意味なので、チェックは誰でも簡単にできます。
確認をする際にも硬ければ硬いほど良いわけではないので自身の運転頻度や保管状況などに合わせて適切な製品を選ぶように心がけましょう。
業者でもこのあたりの認識を誤っている人間は多くいるので自分自身が正しい知識を持っている事がとても重要になってきます。
正しいガラスコーティング選びで美しい愛車を維持し続けましょう。
それでは、良きカーライフを。