【プロが解説】CANインベーダーによる高級車窃盗。プロテクションフィルム施工後の車両保険、そのままで大丈夫?

2025年9月18日、「被害総額5800万円相当、高級SUVを狙った窃盗グループ逮捕」という衝撃的なニュースが報じられました。
犯行に使われたのは「CANインベーダー」という巧妙な手口。大切に保管していても、プロの手にかかればわずか数分で愛車が姿を消してしまうという現実は、多くの高級車オーナーにとって決して他人事ではありません。
「自分の愛車は大丈夫だろうか…」 物理的な防犯対策を強化することはもちろん重要です。
しかし、もう一つ、絶対に見過ごしてはならない視点があります。
それは、もし万が一の事態が起こってしまった場合、あなたの愛車に施工した高価なプロテクションフィルム(PPF)やカーコーティングの価値は、きちんと補償されるのか?という問題です。
この記事では、車両盗難の最新手口と、多くのオーナーが見落としがちな「プロテクションフィルム施工後の車両保険の落とし穴」について、カーディテイリングのプロであるアルファが徹底的に解説します。
CANインベーダーによる高級車窃盗が多発

今回の事件で使われた「CANインベーダー」とは、一体どのような手口なのでしょうか。
簡単に言えば、自動車の神経とも言える電子制御システム(CAN)に外部から不正にアクセスし、ドアの解錠からエンジン始動までを意のままに操るという非常に悪質な手口です。
従来の盗難対策であるハンドルロックやGPS追跡装置も、このCANインベーダーの前では無力化されてしまうケースも報告されており、防犯のイタチごっこが続いているのが現状です。
特に、レクサス(LX, RX)、ランドクルーザー、アルファードといった国産高級SUVは、その頑丈さや信頼性から海外での人気が非常に高く、窃盗団にとって格好のターゲットとなっています。
盗難された車両は即座に解体され、部品として海外に不正輸出されるルートが確立されており、一度盗まれてしまうと取り返すのは極めて困難です。
このように、脅威がすぐそこに迫っているからこそ、物理的な防犯対策と並行して、「盗難されてしまった後」の金銭的な損害を最小限に抑えるための備えが不可欠なのです。
もしプロテクションフィルム施工車が盗難に遭ったら?

ここからが本題です。 あなたは、愛車を守るために100万円以上をかけて、ボディ全体をプロテクションフィルムで保護したとします。
しかし、その直後に不運にも車両盗難の被害に遭ってしまいました。
もちろん車両保険には加入済み。これで一安心…とは、残念ながらなりません。
車両保険では補償されない「フィルムの価値」
衝撃的な事実ですが、プロテクションフィルムを施工した後、保険会社にその旨を申告し、契約内容を見直していなければ、盗難時にフィルムの価値(施工費用)は一切補償されない可能性が非常に高いのです。
なぜなら、保険会社が契約時に把握しているのは、あくまで工場出荷時の「ノーマル状態の車両本体価格」だけだからです。
これは、たとえば高価なエアロパーツを後付けした場合を想像していただくと分かりやすいかもしれません。
もしフロントスポイラーやサイドステップといったエアロパーツを取り付けたことを事前に申告していなければ、事故でそれらが破損しても、パーツ代や再塗装・交換費用は保険でカバーされないのが一般的です。
プロテクションフィルムも、このエアロパーツと全く同じ考え方です。
数十万、時には百万円を超える価値を持つ「高価な追加パーツ」として、その存在と価値を保険会社に正しく認識してもらう必要があるのです。
あなたが後から追加したプロテクションフィルム、フルボディのカーラッピングや、その他の高価なカスタムパーツの価値は、申告しない限り保険会社は知る由もありません。
【具体的なシミュレーション】 例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。
- 車両本体価格: 1,000万円
- プロテクションフィルム施工費用: 150万円
- あなたの車の資産価値の合計: 1,150万円
この状態で盗難被害に遭った場合、どうなるでしょうか。
- 【保険を見直していない場合】
保険会社は車両本体の1,000万円を基準に保険金を支払います。
つまり、あなたがフィルムに投資した150万円は完全に自己負担となり、次の車に同等のフィルムを施工する際は、再び150万円が必要になってしまいます。 - 【保険を見直した場合】
施工後に保険会社へ申告し、「この車は1,150万円の価値があります」という内容で契約を更新していれば、保険会社はその価値を認めて保険金を支払います。
これにより、フィルムに投資した150万円も守られ、金銭的なダメージを最小限に抑えることができます。
盗難・全損だけでなく「部分的な事故」でも注意が必要
この保険の考え方は、盗難や全損のような大きな被害だけに限りません。
むしろ、より身近な「部分的な事故」の際にこそ、この問題は現実的になります。
例えば、駐車場でフロントバンパーをぶつけてしまったとします。
幸いにも車全体の価値が損なわれるほどの大きな損傷ではありませんでした。
しかし、バンパーの修理・交換を行うと、そこに施工されていたプロテクションフィルムは当然剥がすことになります。
修理後、バンパーにフィルムを再施工する費用は、保険の契約を見直していなければ補償の対象外となってしまうのです。
「バンパーの修理代は保険で出たけれど、フィルムの再施工費用数十万円は自己負担だった…」
このような事態を避けるためにも、施工後の保険契約の見直しは極めて重要です。
愛車の資産価値を守る「保険」のQ&A

Q1. 保険料は具体的にどれくらい上がりますか?
A. 正確な金額は、追加する施工費用、ご契約の保険会社、現在の等級や車両料率クラスによって変動するため一概には言えませんが、一般的な目安として月々数百円から数千円程度の追加となることが多いです。
例えば、150万円のプロテクションフィルム施工を追加申告した場合でも、年間で1万円〜3万円程度の保険料アップに収まるケースがほとんどです。
万が一の際に失う可能性のある150万円という価値を、この金額で守れると考えれば、費用対効果は非常に高く、必要不可欠な投資と言えるでしょう。
Q2. カーコーティングやカーラッピングでも同じように申告は必要ですか?
A. はい、基本的な考え方は同じです。
高価なセラミックコーティングはもちろん、車両全体の色を変えるようなフルラッピングも施工費用は非常に高額になります。
これらもプロテクションフィルムと同様に、必ず保険会社へ申告し、車両の資産価値に含めてもらうことを強く推奨します。
Q3. フィルムを部分的に施工した場合でも、申告は必要ですか?
A. はい、たとえ部分的な施工であっても、申告しておくことをお勧めします。
例えば、飛び石被害を最も受けやすいフロントバンパーやボンネット、ヘッドライトへの「フロントセット」施工でも、費用は数十万円になることが一般的です。
もし事故でフロント部分を損傷した場合、フィルムを再施工する費用が保険でカバーされるか否かは大きな違いとなります。
施工費用が5万円、10万円を超えるような場合は、一度保険代理店に相談してみるのが良いでしょう。
Q4. 保険会社に連絡するのは、施工前と施工後どちらが良いですか?
A. 施工が完了し、支払った金額が確定した後に連絡するのが最もスムーズです。
保険会社は、「実際にいくらの価値が追加されたのか」を証明する書類(施工証明書や領収書)を基に手続きを進めます。
そのため、施工前に「これからフィルムを貼る予定です」と伝えても、具体的な手続きには進めません。
まずはしっかりと愛車を保護し、その価値を証明する書類が手元に揃ってから、速やかに保険代理店へご連絡ください。
Q5. もし申告を忘れたまま事故に遭ってしまったら、もう手遅れですか?
A. 非常に厳しい状況になりますが、諦めずに、まずはご自身の保険代理店と、私たちのような施工店にご相談ください。
保険契約の原則としては、事前の申告がない限り補償は難しいのが実情です。
しかし、交渉の進め方や、事故の状況、保険会社の方針によっては、何らかの形で考慮される可能性がゼロではありません。
私たちは、施工の事実を証明する書類の再発行など、できる限りのサポートをいたします。
ですが、これはあくまで最終手段です。このような事態を避けるためにも、施工後の申告を徹底することが何よりも重要です。
万が一の時に後悔しないために今すぐやるべきこと

「話は分かったけど、手続きが面倒くさそう…」と感じるかもしれません。
ご安心ください。やるべきことは非常にシンプルで、以下の3ステップだけです。
1. 施工証明書・領収書を必ず保管する
まず、プロテクションフィルムを施工した証明となる書類(施工証明書、見積書、領収書など)を大切に保管してください。
これらは、フィルムにいくらかかったのかを客観的に証明する、何より重要な証拠となります。
信頼できる施工店は、必ずこれらの書類を正式に発行してくれます。
2. 保険代理店へ連絡し、施工内容を申告する
次に、ご加入の保険代理店へ連絡します。この時、どう伝えれば良いか戸惑う方もいるかもしれません。
以下のようなモデルトークを参考にしてみてください。
【保険代理店への連絡トーク例】 「お世話になっております。先日、契約している車両(車種・ナンバー)に、後付けでプロテクションフィルムを施工しました。車両の価値が上がったため、車両保険の契約内容を見直したいのですが、手続きについて教えていただけますでしょうか。」
このように切り出せば、担当者はすぐに意図を理解し、必要な手続きを案内してくれます。
3. 施工費用を含めた車両価値で保険を再契約する
担当者の案内に従い、施工証明書などを提出し、正式に保険金額(車両価値)の変更手続きを行います。
手続きが完了すれば、あなたの愛車はフィルムの価値も含めて、正しく保険で守られている状態になります。
これで、万が一の事態が起きても安心です。
施工から保険対応までアルファがフルサポートします

私たちアルファは、カーディテイリングのプロフェッショナルとして、最高品質のプロテクションフィルム施工技術をご提供することはもちろん、その後の「資産価値の保護」まで含めて、お客様のカーライフをトータルでサポートすべきだと考えています。
「手続きがよく分からない」「保険会社に上手く説明できるか不安」 そういったお客様の不安に寄り添い、私たちは以下のようなサポートをお約束します。
- 保険会社への提出に完全対応した公式書類の発行
私たちは、施工内容、使用したフィルム、各部位の費用などを詳細に明記した、正式な「施工証明書」および「領収書」を発行いたします。
これは、お客様が保険手続きを行う上で、最も信頼性の高い証明書となります。 - 保険手続きに関する丁寧なアドバイス
これまでにも、事故に遭われたお客様の保険対応をサポートしてきた豊富な経験がございます。
その知見を活かし、お客様が保険会社とスムーズにやり取りできるよう、手続きのポイントなどを分かりやすくアドバイスさせていただきます。
アルファにとって、フィルムを貼り終えた瞬間は「仕事の終わり」ではありません。
そこから始まるお客様の安心で豊かなカーライフまで見据え、技術と知識の両面で、末永くお付き合いさせていただきたいと考えています。
愛車の資産価値を本当の意味で守るために

最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。
- 高級車の窃盗手口は巧妙化しており、CANインベーダーなどの脅威はすぐ身近にある。
- プロテクションフィルムは、それ自体が数十万〜百万円以上の価値を持つ高価な「資産」である。
- その資産価値を守るには、施工後に必ず車両保険の契約内容を見直し、フィルムの価値を保険金額に含める必要がある。
- アルファでは、最高の施工技術はもちろん、その後の保険手続きまで見据えた万全のサポート体制を整えている。
プロテクションフィルムは、決して安い投資ではありません。
だからこそ、その価値を正しく理解し、適切な方法で守り抜く必要があります。
この記事が、あなたの大切な愛車をあらゆるリスクから守る一助となれば幸いです。
プロテクションフィルムの施工や、それに伴う保険のことまで、どんな些細なことでも不安や疑問があれば、ぜひ一度、私たちアルファにご相談ください。
アルファへご相談ください。
施工はゴールではなくスタートライン。
私たちは掛かりつけ医のように、施工後も寄り添い続けるパートナーでありたいと考えています。