【イトロ処理】カーコーティングの密着度を高めるガスグラスプライマー処理とは
皆さんは「イトロ処理」というのを耳にしたことがあるでしょうか。
宇宙航空研究開発機構のJAXAも航空機のアルミニウム合金に採用しているイトロ社の特許技術である「イトロ処理」とは、特殊なバーナーのような装置を用い、ボディ表面にナノシリカ(二酸化ケイ素微粒子)を形成させるといったものになります。
それらの特殊技術を自動車のコーティング下地処理工程に応用したのが「ガスグラスプライマー処理」です。
本記事ではまだ特定の店舗でしか施工することができない「ガスグラスプライマー処理」について触れていこうと思います。
ガスグラスプライマー処理とは
ガスグラスプライマー(GGP)処理とは、フレームバーナーによる酸化炎を介してSio2(二酸 化ケイ素)を構成成分とするナノレベルの粒子をボディに付着させ、被塗布物の密着性を大幅に向上させる表面処理方法のことを指します。
ボディ表面の凹凸をナノレベルで無くすことで、ボディとコーティング被膜の密着性を高め、コーティング被膜がボディに留まり続けようとする耐久性を最大限まで引き上げます。
従来の基材表面のみを改質する前処理(フレーム処理、コロナ処理、プラズマ処理)とは全く異なり、易接着性物質を表面に付加する技術なのです。
また、火炎と火炎内で起こった化学反応によってボディ表面を酸化させ、科学的にコーティングの密着性を上げるといった効果もあります。
小難しいことを書きましたが、簡単に言うと人間の手による研磨作業では物理的に削りきることの出来ないボディ表面の目に見えない凹凸を化学反応で均し、かつ密着性を向上させるというものになります。
なぜSio2なのか
Sio2(二酸化ケイ素)とはそもそも何なのか。
簡単に言うとガラスの抗生物質の一つです。
コーティングの密着性を向上させるためには「基材をいかに平坦にできるか」これに尽きます。
凹凸のある壁より窓ガラスにシールが張り付きやすいのと同じ理屈です。
この密着性向上の原理をより詳しく知るために必要な知識として、コーティングの世界でも度々耳にする「親水性」について説明しなければなりません。
親水性とは読んで字のごとく水に馴染みやすい性質の事を指し、ガラスの表面構造はこの「親水性」が非常に高いのです。以下の表をご覧ください。
材質 | ガラス | PP | HOPE | ステン | アルミ |
現状 | 35程度 | 40程度 | 38程度 | 34程度 | 40程度 |
コロナ処理 | 35程度 | 46程度 | 46程度 | 34程度 | 40程度 |
フレーム処理 | 35程度 | 52程度 | 50程度 | 34程度 | 46程度 |
イトロ処理 | 73以上 | 73以上 | 73以上 | 73以上 | 73以上 |
これは、各前処理をした基材の「濡れ性」を測定したものです。
濡れ性とは親水性を分かりやすく数値化したもので高ければ高いほど基材の接着性が向上し、低いと密着性が悪くなります。
コロナ処理、フレーム処理と比較するとイトロ処理がいかに優れているかお分かりいただけるかと思います。
火炎による熱の影響
イトロ処理(ガスグラスプライマー処理)は約1000℃の火炎をボディ表面に当てる処理方法です。車が燃えてしまうことはないのか。
塗面への影響はないのか。
と心配される方もおられるかとは思います。
しかし、ご安心ください。火炎の当て方や処理スピードを変えることにより熱の影響をなくし、その恩恵だけを受けることが可能になります。
これを応用すれば塗装面だけではなく樹脂パーツやホイール、なんにでも使うことができます。
しかし、裏を返せば車に使われている基材の材質を熟知した熟練のプロにしかできない高度な処理方法とも言えるのです。
実際にガスグラスプライマー施工してみた
ここまで長々と解説していきましたが、実際に見ていただいたほうが効果が分かりやすいと思うので実践してみましょう。
自動車のボンネットをサンプルにガスグラスプライマー処理施工済み箇所とそうでない箇所でどれほど差が出るのでしょうか。
左が処理済み、右が未処理です。どこにでもあるマスキングテープと養生テープ、カーラッピングの端材ですが、その何れもがガスグラスプライマー施工がされている箇所ではなかなか剥がれてくれません。
とても同じものとは思えないほどの粘着強度となります。
これは、ガスグラスプライマー施工の恩恵でもある基材表層にナノシリカを薄く塗布することでガラスにより近く、粘着しやすい基材になっている事、表面酸化でさらにその粘着力を上げている事が起因しています。
この技術をカーコーティングやカーラッピングの下地処理に応用することによって、塗面にカーコーティングが残り続けようと働く力を増幅させることが可能となるのです。
イトロ処理済み
マスキングテープ、養生テープ、カーラッピング端材。
それぞれ粘着力の向上を感じることができました。
剥がしやすく作られているマスキングテープや養生テープがここまではがれにくくなるとは正直筆者も思っていませんでした。
親水性向上
左がガスグラスプライマー未処理、右が処理済みとなります。基材に水が馴染みやすくなってますね。
この状態にすることでコーティングの密着度が向上します。
まとめ
いかがだったでしょうか。
簡単にではありますがガスグラスプライマー(イトロ処理)について解説させていただきました。
正直、筆者自身もこの施工方法に触れるまで半信半疑だった部分もありました。
しかし、実際に触れて施工を繰り返すことによって大きな効果を実感することができました。
身近に施工できる店舗があれば依頼してみてはいかがでしょうか。
カーコーティングの概念そのものが変わると思いますよ。